しかしそこから抜群のスピードをアピールしてすぐに支配下登録されると、一昨年は12盗塁、昨年は20盗塁をマーク。今年のオープン戦では途中から1番、センターに定着して打率.300という好成績を残した。前述したようにスピードが最大の武器で、それを生かすためにスイッチヒッターにも取り組み、その成果が徐々に出てきている。チームのセンターはなかなか固定できていないポジションだけに、佐野にとっては大きなチャンスの年となることは間違いないだろう。
小郷は2018年のドラフト7位という低い順位での入団ながら順調にステップアップし、昨年は一軍で31安打、打率.295をマーク。今年のオープン戦では同期でドラフト1位の辰己涼介がヒットを量産して注目を集めていたが、小郷も12試合で12安打を放ち、打率も.293と安定した成績を残した。
大学時代から広角に打ち分ける打撃技術は高いものがあり、また脚力と肩の強さでも目立つ存在だった。プロのレベルにも順調に慣れてきたように見える。チームの外野には同期の辰己以外にも実績のある島内宏明、2018年の新人王である田中和基がいるだけにレギュラー争いは厳しいが、持ち味である攻守の安定感を武器に、一気に定位置獲得を狙いたいところだ。
その他では野村佑希(日本ハム)、山口航輝(ロッテ)の高校卒3年目の右の大砲候補も抜擢の機運が高まっている。野村はドラフト2位での入団だったが、それ以外は上位指名ではなく、プロ入り後に着実に力をつけてきた選手たちである。どうしてもドラフト1位など華々しい経歴を持つ選手に注目が集まるが、それ以外の新レギュラー候補にもぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員