こうした改革に加え、感染拡大防止のための「疫学調査」と、患者さんと直接向き合う「臨床研究」を一体化させた組織も必要です。そこで私たちは、感染研と、やはり厚労省所管の国立国際医療研究センターを母体とした「健康危機管理機構」という新たな独立行政法人をつくることを提案しました。しかし、厚労省はこの構想に猛反対しています。 感染研が切り離されると、厚労省のグリップが利かなくなり、ますます司令塔としての機能が脆弱になるというのが彼らの理屈ですが、総理直轄の独法にして強い権限を持たせることで、自由で適切な研究調査ができる新しい仕組みが生まれると考えています。
この4月から感染研の定員は362人から716人へと倍増しますが、いまの枠組みの中で太っていくだけでは意味がない。官民や産官学の連携は進まないでしょう。感染症に関する情報を感染研に集約することは必須ですが、情報を独占せず、きちんと開示して外部の専門家がアクセスできるようにしなければなりません。
欧米の公衆衛生部門はすべて開かれたシステムになっているのに、日本は囲い込みのシステムになっていて、情報を独占することが権限の象徴のようになってしまっている。そうした旧態依然とした発想が、世界の新しい変化に対応できなくさせているのです。
ガバナンスの仕組みを変えることが、コロナ対策のカギだと考えています。
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2021年4月16日号