「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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ITによる効率化が世間に浸透するなか、ローソンでも「セミオート発注システム」や「スマホレジ」など、いち早く現場にデジタル技術を導入しました。昨年には、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進委員会を設置。今やデジタルは日常生活に切り離せない存在です。
DX化というと、理系的な印象を持たれるでしょうか。プログラミングやデータサイエンスのスキルを持っていないと、DX人材にはなれないのでしょうか。私はそうではないと考えています。
プロの領域ともなれば、文理の垣根が出てきます。ですが、DXの出発点は新しいアイデアを生み出せるかどうか。アイデア創出には今のIT事情を一定程度理解しておく必要がありますが、努力すれば誰でも体得可能です。
アイデアが生まれた後は、どうデジタル化していくかが問われます。
その実現過程において、人力でやっていたことをデジタルに置き換えたり、AIを活用してみたりする。不便なことをデジタルで解決できないか想像したり、デジタル化によって便利になったことを分析してみたり。身の回りの出来事を置き換えて深掘りすれば、文系であっても理系であっても、変化に気づき、新しいビジネスを生み出せます。
活躍しているテック系企業のCEOを見渡しても、文系出身の方が多くいます。
DX時代に理系の方が就職に有利なのでは……という心配の声も聞きますが、お客様のニーズをくみ取り、その実現に向けて商品開発や物流、サービスなどの在り方を変えていく人財に文理の概念はありません。
デジタルの素養をベースにして、理系のプロフェッショナルに進むもよし。ゼネラリストとして様々な視野を養うもよし。今やっていることに自信をもって、自分の道を切り開いてもらいたいです。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長