「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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うれしさと感動で、格別な余韻にこのままずっと浸り続けたい気持ちです。ゴルフの松山英樹選手が、4大大会の一つ「マスターズ・トーナメント」で日本男子として初優勝。大学時代にゴルフ部だった私でも、マスターズはとんでもなく特別な存在。松山選手は、比べようもないくらい強い思いがあったでしょう。
ゴルフは、我慢のスポーツだと私は思います。松山選手は2017年の「全米プロゴルフ選手権」で5位になったときも、最終日11番ホールまで首位に立ちながら、残りの7ホールで負けた。あと一歩が、遠かった。この4年間もなかなか勝てなかった中、心は折れなかった。
今回も、首位に立った3日目のゴルフは神がかっていましたし、4日目も見事に乗り切った。技術もさることながら、素晴らしい精神力だと思います。そんな精神と強靱な肉体を得た陰には、厳しい鍛錬があったでしょう。努力が「勝利」という目に見える形で結実するスポーツの素晴らしさも、改めて感じました。
その後、マスターズ優勝者に贈られる最高の栄誉「グリーンジャケット」を、空港の待合室の椅子に丁寧にかけて飛行機を待つ姿を報道で見て、ある記憶がよみがえりました。数年前、飛行機で松山選手と席が隣になりました。目を閉じて休んでいるようにも見えたので、降りるときに一言だけ「松山さん、がんばってください」と伝えました。「あ、どうも」と答えてくれた時の、何とも自然で素朴な表情。飾らない人柄は変わっていないと、またうれしくなりました。
マスターズから始まる今年の4大大会をすべて勝つ「年間グランドスラム」の偉業を達成する権利を持つのは、いま松山選手だけ。いつかは自分もと思う子どもたちも出てくるでしょう。日本中に夢を与えてくれました。カッコいいぞ、世界のマツヤマ! おめでとう、そしてありがとう!!
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長