ジャーナリストの田原総一朗氏は、原発の新増設を目指す動きに警鐘を鳴らす。
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今や、世界中で「サステナビリティー(持続可能性)」が、主たる共通目標となっている。
そして、地球環境を世界のトップリーダーたちが重要視するようになった。
2015年12月、190を超える国と地域がパリ協定という国際協定に合意し、産業革命からの地球の平均気温上昇を1.5度未満に抑えるという国際目標を定めた。
そして、世界の先進国はいずれも2050年にCO2をゼロにすると決意している。
先進国でそれを表明していなかったのは米国と日本だけで、何とトランプ前米大統領はパリ協定からの離脱を宣言したが、バイデン大統領はパリ協定に復帰し、「温室効果ガスを30年までに05年比で半減する」と宣言した。
そして、日本の菅義偉首相も、バイデン氏の表明を予測したように「2050年CO2ゼロ」を宣言し、「13年度比で、30年度に46%削減する」と公約した。
ところが、菅首相がカーボンニュートラル宣言をしたのを受けて、4月12日に、自民党の有志議員による「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議連」が、国会内で設立総会を開いた。
政府が今夏にまとめる次期エネルギー基本計画に、原発の新増設やリプレース(建て替え)推進が明記されることを目指す、としているのである。
11年3月の東京電力福島第一原発事故以降、政府は原発の新増設を認めない方針に転換しており、菅政権も新増設には言及していない。同議員連盟の会長を務める稲田朋美元防衛相は会合で、「震災後は原発の新たな建設がなされず、技術や人材の枯渇の危機にある。エネルギー基本計画の中に原発のリプレースを進めると明確にしたい」と強調した。
議連顧問には、甘利明元経済産業相や額賀福志郎元財務相、細田博之元幹事長らが就任していて、さらに安倍晋三前首相も顧問に就いて、「国力を維持しながらエネルギー政策を考える上で、原子力と向き合わなければならないのは厳然たる事実だ」とあいさつした。