ツッコミのやり方にも時代ごとの流行り廃りがあり、今はツッコミのフレーズ自体を工夫するのが主流だ。何かにたとえてツッコむ「たとえツッコミ」などが人気を博していて、それを得意とする芸人が活躍している。

 そんな中で、時代に逆行したツッコミ芸で話題になっているのが、ピン芸人のおいでやす小田である。彼はピン芸人のこがけんとのコンビ「おいでやすこが」として、2020年の『M-1グランプリ』で準優勝を果たし、一気にブレークした。

 おいでやす小田は、頭の血管が切れそうなほど激しく力強いツッコミで知られている。あまりフレーズをこねくり回したりしない直球型のツッコミである。古き良き王道のツッコミと言ってもいい。

 そんな時代にそぐわないツッコミ芸を売りにしていたということもあり、おいでやす小田はピン芸人としてはなかなか世間に認められなかった。専門家には高く評価されるしっかりした芸を持っていたので、ピン芸日本一を決める大会『R-1グランプリ』では5年連続で決勝に進んでいた。しかし、一度も優勝することはできなかった。

 おいでやす小田のツッコミ芸は芸人の間では以前から評判だった。特に、雑にいじられたときの返しの面白さには定評があり、仲間の芸人たちが彼をひたすらいじり倒す「おいでやす小田で遊ぼう」というライブもたびたび行われていたほどだ。

 ピン芸人だった彼の才能は意外な形で開花した。こがけんとコンビを組んで、漫才を披露したところ、それがウケまくった。あれよあれよという間に昨年の『M-1』では決勝まで勝ち上がり、あと一歩で優勝というところまで行った。
 
 おいでやす小田が『M-1』で評価されたのは、コンビで漫才を演じることで、彼のツッコミの面白さが伝わりやすくなったからだろう。一人芸のときには、架空のボケ役を相手にして彼がツッコミをいれるネタが多かった。

 その形式だと、舞台上ではおいでやす小田が1人で一方的にツッコみ続けているように見えてしまうため、お笑い好き以外の一般人にとってはやや味付けが濃すぎるというふうに感じられたのかもしれない。こがけんのボケに対するツッコミに徹したことで、純粋なツッコミの面白さが際立つことになった。

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小田の生き生きとしたツッコミ芸が光ったお笑い特番