世の中にはすてきな会社がたくさんあって、お客さんが喜ぶ商品やサービスを提供しています。お客さんは「これは助かる。どうもありがとう」と言って代金を払います。そして会社はお金を支払ってくれたお客さんに対して「ありがとうございます」という感謝を示してお金を受け取ります。その会社にはお子さんたちのお父さんやお母さんのような大人たちが大勢働いています。会社は毎月「お疲れ様。どうもありがとう」と言って、お給料を支払います。そして、大人たちは「どうもありがとうございました」と言って、お給料を受け取ります。
そうか、だから自分たち子供は、毎晩お食事を食べることができて、服を買ってもらい、楽しい家族旅行に行けるんだ。このようにお金とは社会で巡り回って流れて来るものだということが、お子さんの目に浮かんできます。そして、お金は社会に循環しているときに必ず存在しているものがあります。それは「ありがとう」です。
「ありがとう」の連鎖によってお金は社会に巡り回り、そして、「ありがとう」が増えれば増えるほど価値が高まる。実は「投資」とは「ありがとう」が増えることの応援なんだ、とお子さんにお話ができます。
もちろん、これはお子さん向けの話です。しかし、ここに大人でもわかるべき本質があると思います。
今回のコロナ禍で私たちは肌で感じました。いかにMe、自分や家族の健康を守ることが重要であることが。しかし、Meだけで、Weが分断されてしまうとMeが何もできなくなる。Weがきちんと回っているからMeの生活が成り立っているということにも気づいたと思います。
つまりMeからWeへは決してMeの否定ではありません。MeからWeへ、そしてWeからMeへという循環が重要であり、それがSDGsの本丸である「包摂性」にもつながっていくのです。
MeからWeへ。これが、渋沢栄一が示した真に理財に長じる人であり、このような大勢な存在が、SDGs達成へとつながるのです。「よく散ずる」ことにご関心ある方は、拙著「SDGs投資」(朝日新聞出版)をどうぞご笑覧くださいませ。(渋沢健)
◆しぶさわ・けん シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、東京大学総長室アドバイザー、成蹊大学客員教授、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。近著は「SDGs投資」(朝日新聞出版)