そのために大戦後、経済が疲弊した欧州、アジアの国々を回復させるために莫大(ばくだい)な資金を提供した。米ソ冷戦期も、西側諸国を守るために数多くの軍人を派遣し続けた。米国民は、いわば米国が世界の国々の犠牲になっている、と感じていたのだろう。
そして、1980年代から世界の潮流となったグローバリズムだ。
グローバリズムとは、ヒト・モノ・カネが国境を越え、世界市場で活躍するということ。米国は人件費が高く、多くの経営者たちが工場を人件費の安いメキシコやアジアに移転させた。その結果、米国の多くの工業地域が廃虚のようになった。失業者はどんどん増加した。だから、トランプ氏の発言に多くの米国民が共感したわけだ。
だが、前述したようなことでトランプ氏は再選されず、そして「赤い波」も起きなかった。
それにもかかわらず、トランプ氏は15日に大統領選再出馬を表明した。なぜなのか。
BS朝日の番組で中林美恵子早稲田大教授と小西克哉国際教養大客員教授に問うと、トランプ氏は現在さまざまな事柄で検察に起訴されそうであり、それを避けるための出馬表明だろう、と語った。
米社会、そして全世界をかき回すトランプ氏の動向を今後も注視していきたい。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年12月9日号