河野氏は落ち着いた口調で言った。だが、菅首相は1日に100万回の接種を目指し、希望する高齢者には7月末を念頭に接種を終える、と打ち出していたのだが、少なからぬ自治体の首長から「ワクチンが不足している」「ハシゴを外された」という悲鳴が上がっている。自治体によっては集団接種の予約をストップせざるを得ない事態も起きている。
そのことを問うと河野氏は、菅首相の言った100万回はすでに上回っているのだが、地方自治体が頑張り、想定を上回るペースでワクチン接種が加速し、130万回以上の接種となったので、混乱が生じているのだ、と説明した。
だが、最初に大号令を発したのは政府のはずである。ワクチンの需給のバランスを調整するのが政府の仕事であり、それが河野氏の責任ではないのか、と追及すると、河野氏は「その問題はまさにそのとおりで、混乱を生じさせたことは、誠に申し訳ない」と極めて率直に認めて、「ただし、希望する国民の全員がワクチンを接種できるだけの量を9月末までには何としても確保する」と言い切った。
その率直な言葉を信用したい。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年8月20‐27日号