これなら、ビジネスシーンでも使えそうだ。このサービスで生成したアバターは凸版印刷が構築したメタバース空間内のみならず、さまざまなメタバース空間内で活動できる。今後は、ちょっとしたしぐさや表情も本人の特徴をより忠実に反映できるよう改良を重ねるという。
同社は法人単位で社員のアバター生成を受け付けるサービスを既に始めている。従来のCGクリエイターによるアバター制作にかかる費用の約10分の1の価格でアバターを提供できるという。近日中にサブスクリプションサービスでの提供も開始するといい、今後さまざまなシーンでメタクローンを見る機会が増えそうだ。
■新入社員研修で活用
印刷会社として色調や質感などにこだわる高精度のCG技術を研究・開発してきた凸版印刷は、25年前から画像処理技術の拡張としてVRならではのインタラクティブ性と没入感の表現開発に取り組んできた。
メタバースビジネスの裾野を広げるため、同社が注力するのはヘッドマウントディスプレーやAR(拡張現実)グラスをつけずに、肉眼で3D空間に没入できる映像演出システムだ。スマートフォンの画面でも使える「メタパ」は、アバターに扮したユーザーがバーチャル空間上に構築された店舗を自由に回遊できる。出店は現在10店舗だが、数百社から相談を受けており、今後も着実に出店店舗は増えていく見込み。将来的には「新たな街」を3D空間上に出現させ、そこで体験型のショッピングやイベント、観光などを楽しめる新たな経済圏を構築するシナリオだ。
メタバース上で会話する相手を選び、リアルの場での会話のような物理的距離感を体感しながらコミュニケーションできるメタパの機能は社内コミュニケーションツールとしても応用できる。実際、メタパをカスタマイズし、コロナ禍での凸版印刷の新入社員研修で活用したところ好評だったという。利用した社員からは「近づくと会話できるため、現実に近い感覚を楽しむことができた」「オンライン会議システムよりも距離が近いと感じた」といった感想が寄せられている。村田さんは言う。
「非日常のメタバース空間で社員相互のコミュニケーションを図ることで、新しい業務のアイデアが出てくる効果もあると考えています。アフターコロナにも高いニーズがあると見込んでいます」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年12月5日号