せいぜい「街の明りは無視してもよい」という言葉の巧妙さやエモさしか分からないのです。学校での勉強は大人になって役に立たない、とおっしゃる方もいますが、このようなふとしたときや芸術作品に触れたとき、暗喩や比喩に出合ったときに、その単語や言葉の意図が分からないと面白さや素晴らしさが理解できないのです。

 お笑い芸人や漫談、落語においても話の面白い人は例え話が上手です。比喩は笑いの話術の基本の型の一つであり、知識の引き出しが発揮される部分でもあります。「人志松本のすべらない話」に登場する芸人さんたちの話は、非常に面白いです。彼らの話は、起承転結があり、オチがあり、話し方もテンポも素晴らしいです。なかには、身の回りの些細なことを面白く話しているパターンもあります。

 おそらく彼らは日頃からネタになるような事柄を記憶し、面白く話す言い回しや比喩を考え、オチや起承転結のつけ方も計算して話しています。YouTuberも話が面白い人や、面白い動画を制作する人は、頭が良い人です。必ずしも学業が優れていたわけではありませんが、頭の中にはしっかりと引き出しがあり、面白さの元となる知識が備わっているために、独特の言い回しやテンポや間の作品が仕上がります。歴史や古典や数学など、(これを覚えたところで何の役にたつんだろう)と思うかもしれませんが、とくに若い方には、その知識がいつどこで役に立つかわからないかもしれませんが、しっかり頭の中に入れておくと、人生が少しだけ以前よりも楽しくなるかもしれません。直接的にその知識を使うわけではなくても、知性や教養と呼ばれるものは大切です。知識なしには面白いものは生み出せないからです。