ED治療薬が日本で承認されて20年あまり。今では完全に市民権を得ており、永尾さんのところでは、マスターベーションのためにバイアグラを処方してもらう90代の男性もいるそうだ。
もう一つ知っておいたほうがいいのは、普段飲んでいる薬によるED。代表的なのはうつ病の薬だが、男性型脱毛症(AGA)の治療薬(プロペシアなど)でも起こる。添付文書によると、プロペシアのEDや射精障害の発生率は1%未満だ。
女性は、加齢による影響が男性よりも大きい。
「エストロゲンの減少によって外陰部や腟の粘膜が薄くなり、萎縮が起こります。そのため潤いがなくなってかゆみやヒリヒリ感が出たり、性交痛が生じてきたりします」
こう話すのは、産婦人科医でジュノ・ヴェスタクリニック八田(千葉県松戸市)院長の八田真理子さん。最近では頻尿や尿もれなどの泌尿器トラブルと合わせ、更年期以降に起こる一連の症状は「閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)」と定義されている。GSMでみられる主な症状は、腟や外陰部のかゆみやムズムズ感、 性欲やオーガズムの低下などさまざま。
八田さんは、同院を受診した35歳以上の患者や検診受診者2760人にアンケートをとったところ、53%に女性特有の不快症状があったという。訴えが多かった症状は、順に、かゆみ、尿もれ、頻尿だった。
「最近では、女性の陰部を“デリケートゾーン”と呼んでいますが、このデリケートゾーンのトラブルを医師に相談できず一人で悩み、多くの人が放置しています。しかし、フェースケアと同じく、デリケートゾーンをケアすることで生活の質が大きく向上することがわかってきました」(八田さん)
GSMの治療は、エストロゲンの分泌が低下してくる更年期であれば、まずはHRTを考慮する。不足した女性ホルモンを補充する治療で、飲み薬や貼り薬、塗り薬などがある。更年期に起こるさまざまな症状の緩和のほか、腟錠は性交痛にも有効とされている(性交痛には、ほかにオイルやジェルなども使用する)。