米実業家イーロン・マスク氏が買収したツイッター社が大きく揺れている。従業員の大量解雇や認証バッジ有料化によって今後どうなってしまうのか。AERA 2022年11月28日号より紹介する。
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スーパーマリオが中指を立てている──。そんなツイート画面が米国で話題騒然となった。
アカウント名を見ると「ニンテンドー・オブ・アメリカ」で青い認証バッジがついている。
ちなみに米国で誰かに向かい中指を立てる行為は、Fワードで侮蔑するのと同じ破壊力だ。
イーロン・マスク氏がツイッター社を買収して約3700人の社員をリストラした数日後には、この任天堂の「なりすましアカウント」が出現した。月額8ドル払えば誰でも青い認証バッジを購入できるというマスク氏が導入した新サービスが悪用されたのだ。
■広告収入激減でカオス
「私個人が世界中で一番愛している企業、任天堂が大事に育ててきたアイコンのマリオが酷い目に遭った。私が任天堂なら、そんなプラットフォームは二度と使いたくないと思うだろう」
そう語るのは、データを駆使して未来を予測分析するコンサルタントで、学者でもあるエイミー・ウェブ氏だ。彼女は2006年にツイッターがサービスを開始すると即使い始めた。「当時は、テック関係者やごく少数のジャーナリストたちがオタクっぽい話題で会話するのどかな場所だった」と振り返る。
07年のサウス・バイ・サウスウェストのテックカンファレンスでは、参加者間で「今夜はどこでクールなパーティーが開かれる?」という情報交換用にツイッターが使われたという。
そんなツイッター歴の長いウェブ氏は、16年の大統領選でのドナルド・トランプ氏の出馬時から“異変”に気付いた。「ツイッター上が政治論議だらけになり、本来の楽しさが失われていった」と感じた。新しいSNSのマストドンにもアカウントを作ったが「まだほとんど誰もいない閑古鳥状態」と語る。
ウェブ氏は「イーロン・マスクの指揮下で、今後ツイッター社が破産する可能性もある」と警告する。理由は広告収入の激減だ。同社は収益の9割を広告の売り上げに頼ってきた。
「ペプシやコカ・コーラなどの大手企業20社からの広告収入が同社の収入の1割を占める。大企業が何としても避けたいのは、自社製品の広告の隣に、米国議会を襲撃した暴力的な人間やネオナチ集団によるヘイト発言が掲載されてしまうこと」
そう語るのは、米国のメディアをウォッチする非営利団体「メディア・マターズ・フォー・アメリカ」の代表であるアンジェロ・カルソン氏だ。