■「許し」を強調するワケ
マスク氏は広告主が感じている強い不安を取り除けるのか?
カルソン氏はこう分析する。
「マスクは、ヘイト発言排除の具体策を説明せずに『許しというものが大事だ』と広告主たちに説教した。これは、ツイッター上で誹謗中傷発言をして追放された人々を、暗に呼び戻すことを示唆したとも取れる。私が知るある企業の部長はこの発言に危機感を感じ、マスクとのコール中に、マスクが喋り終わる前に広告購入を中止した」
カルソン氏自身はツイッター上で、フォックス・ニュース信奉者たちによる「なりすましアカウント」に個人攻撃された被害経験がある。自身の氏名とアバターを掲載したアカウントが巧妙に作られ、そこから部下やメディア業界関係者に誹謗中傷のメッセージが送られたのだ。
「当時、私のアカウントにはまだ青い認証バッジがなく、偽アカウントが発する酷いメッセージを本物だと勘違いする人もいた。身を守るのに青認証バッジがどれだけ大事か身に染みた」
だが、カルソン氏はマスク氏に8ドル払う気はないと断言し「認証を失うけど仕方ない」と語る。ウェブ氏も「私は多分払わない。誰もが認証を買える今、認証の価値は消滅した」と言う。マスクファンらが嬉々として8ドル払うのを醒めた目で見ている一部古参ユーザーたち。その両者ともマスク氏のツイッター発言をチェックする日課は同じだ。(在米ジャーナリスト・長野美穂)
※AERA 2022年11月28日号