「米国で生活し野球をやっていたので考え方が異なるかもしれない。そこを前提にして言わせてもらうと、基本的には『人対人』という2人の問題。例えば、米国では監督と取っ組み合いのケンカをする選手もいる。これは立場など関係なく、人格を否定された場合にこういうケンカになる。野球に関係ないことを言われたり、侮辱されたりするから。そういう一線を超えた時にケンカが起こる。日本ハムの件もイジられた選手が我慢できなかったとしたら、人格を傷つけられていたはず。当人同士の問題のはずだから2人で徹底的に話させるべきだった。そこには先輩も後輩もないと思う」

「また報道されているように、後輩イジりが常態化していて酷過ぎたのなら周りも知っていたはず。こんなに大きくなる前に誰かが収めれば良かった。『ペナントレース勝ち抜くため、日本一を目指す中でしょうもないことするな』とね。米国時代、移動中の空港でいざこざが始まって白人と黒人の人種間で別れて大ゲンカになった。球場内ではなく空港なので下手をすると逮捕者が出て試合もできなくなる。この時には監督が『何しに来ているのか考え直せ。野球をやりに来ていないのならユニフォームを置いて去れ』と怒鳴って収めた。結果論になるけど、日本ハムの件も早く手を打っておけばここまでになることはなかっただろう」

 中田は巨人移籍2試合目となる8月22日のDeNA戦で本塁打を放つなど、さすがの存在感を見せた。しかしその後は結果を残せず、9月11日に二軍降格し調整を続けている。二軍戦では驚異的な打撃成績を残しているが実力を考えれば当然のこと。優勝争いをするチームからは一刻も早い一軍再合流が待ち望まれる。

「良くも悪くも中田君だったから世間で大きく取り上げられる。口で謝罪しようが何しようが、結局プロは結果で判断される。そうなった場合にはまた賛否両論が巻き起こるだろうが、それがスター選手の宿命。味方も敵も多いのがプロの一流選手。中田君には期待しています。野球で結果を残すしかない」

 今回の一件を「なかったこと」にはできない。球界、世間を騒がせ、中田本人の評価を大きく下げたことは間違いない。明確なのは、グラウンドで結果を残すしか野球界で生き残るための道が残っていないということ。ここからどんな姿を見せてくれるのかに注目したい。そして中田の動向が3連覇を目指す巨人を左右するはず。多くのものを背負い結果を残す、本当のスター選手であることを証明して欲しいものだ。(文中敬称略)

(文・山岡則夫)

●プロフィール

マック鈴木(鈴木誠)/1975年5月31日兵庫県出身。193cm90kg。92年に渡米、96年7月7日のレンジャーズ戦でメジャーデビュー、98年9月14日のツインズ戦で初勝利を挙げる。マリナーズ、メッツ、ロイヤルズ、ロッキーズ、ブリュワーズなどでプレー。02年にはドラフト2位でオリックス入団。06年から再び海外でのプレーを経て11年は関西・独立リーグでプレーイングマネージャーを務めた。MLB通算117試合登板16勝31敗、防御率5.72。NPB通算53試合登板5勝15敗1セーブ、防御率7.53。


山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。

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