大学入学共通テストの導入にともない、科目数を増やすなど入試改革を行った私立大も出てきた。共通テストをAERA 2021年9月27日号は「大学入試」を特集。
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21年春、初の共通テストに合わせて、大学の入試改革が注目された。主に首都圏の私立難関大で、共通テストを必須化、受験科目を増やしたケースがあった。
早稲田大学の政治経済学部は、共通テストで数学I・Aの受験を必須とした。志願者数を約3割減らすこととなったが、河合塾・教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんはこう話す。
「経済系は入学後に確率統計を使います。早稲田は大学での教育の内容と、これまで数学が必須ではなかった入試が、リンクしていなかったと考えているのでしょう。受験者数が減ったものの、河合塾の調べでは、受験者の学力層は変わりませんでした」
青山学院大学の多くの学部は、「個別学部日程」の入試方式で、共通テストに加えて、独自の総合問題を課した。志願者数を約4割も減らした。
「別の大学を狙いつつ併願しようと思っていた人は、特別の準備が必要だから、避けたのかもしれない。ですが、全学部方式の志願者数は7%増えました。絶対に青学に行きたい人は受けたのだと思います」(教育ジャーナリストの神戸悟さん)
では22年度は。
「過去問ができましたし、これ以上志願者が減ることはないと思います。志願者が減少した翌年の入試では逆に増えるという『隔年現象』と呼ばれる現象が起こるとよくいわれるのですが、今回は入試の設定が特殊なので、そこまで増えないのではないでしょうか」(神戸さん)
ほとんどの私立大文系学部が、英語・国語・地歴公民もしくは数学の3教科型のスタイルのなか、こうした受験科目を増やして「国公立化」する大学の思惑は何か。
「21年はコロナで地元志向が高まり、都内の大学では地方の受験生がかなり減りました。でも、たくさんの人に受けてもらわないと、レベルが下がることは目に見えています。私立大は地方の優秀な受験生を求めています」(大学通信・常務取締役の安田賢治さん)
■推薦入試も活用して
改革の傍ら、21年度入試はコロナ禍の影響で、個別試験をやめて共通テストだけで合否判定をした国公立大学もあった。横浜国立大もその一つ。志願者数が4割減少した。
「共通テストだけの判定ですからボーダーラインがかなり高くなるだろうと、避けた受験生も多かった。ただ、横国が個別試験をしないと発表したのは20年夏で、今にして思えば英断だったと思います。信州大や宇都宮大は、共通テストの自己採点をして、これから出願しようというときに、個別試験をやめると表明しました。個別試験で挽回しようと思っていた受験生には、たまったものじゃありません」(神戸さん)
22年度はこうした動きが落ち着くとみられる。