そしてフリーの曲は『ボレロ』。1984年サラエボ五輪のアイスダンスでジェーン・トービル&クリストファー・ディーンが滑りジャッジ全員が芸術点で満点を出した、フィギュアスケートにおいては特別な意味を持つ名曲だ。選択に勇気が要る曲に、ワリエワは昨季から挑んでいる。昨年末のロシア選手権で披露した演技は、放送席にいた2002年ソルトレイクシティ五輪チャンピオンのアレクセイ・ヤグディンが感涙するほどの出来栄えだった。長い手足を生かした美しい所作と滑りには、15歳という年齢を忘れさせる豊かな芸術性がある。
今季からシニアに上がるワリエワ、ウサチョワ、フロミフは、共にエテリ・トゥトベリーゼコーチ門下で切磋琢磨している。継続してトゥトベリーゼコーチに師事しているシェルバコワに加え、昨季はエフゲニー・プルシェンココーチの指導を受けていたトゥルソワとコストルナヤも、今季は古巣に帰ってきた。優秀な先輩スケーターも加え、普段の練習から国際大会並みにレベルの高い顔ぶれで練習していることが、彼女たちの強さの理由なのだろう。
精鋭が集う“エテリ組”に初の五輪出場を目指す24歳のトゥクタミシェワも加わり、北京五輪代表の座をめぐる熾烈な争いが予想されるロシア女子。激戦を勝ち抜いた3人が、そのまま北京五輪のメダリスト候補になることは間違いないだろう。(文・沢田聡子)
●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」