一方のイースタンを見てみると2015年から巨人が4連覇を達成している。当時のメンバーで現在一軍の主力となっているのは今村信貴、大江竜聖、岡本和真、吉川尚輝、松原聖弥がおり、ある程度二軍と一軍が連動しているように見える。しかし下位指名から這い上がった選手は大江と松原の2人だけで、その点はソフトバンクと比べると見劣りする感は否めない。今シーズンイースタンで最もイニングを投げているのはFAで加入した井納翔一というのも残念なところだ。若手では横川凱、戸田懐生、平内龍太、ウレーニャ、秋広優人、平間隼人、湯浅大といったところが主力となっているが、彼らが台頭してくるかどうかで将来のチームは大きく変わることになるだろう。

 イースタンで2019年から連覇を達成した楽天はソフトバンク、巨人と比べても更に厳しい状況と言える。この2年間に活躍した選手で一軍の戦力となっているのは滝中瞭太くらいしか見当たらず、その滝中も26歳になる年に社会人からプロ入りした選手ということを考えると二軍で育ったとは言いづらい。岸孝之、涌井秀章、牧田和久、鈴木大地、浅村栄斗など多くの実績ある選手を集めたことでチームは上位争いを演じているが、二軍から一軍への戦力輩出という意味では色々と見直す必要がありそうだ。

 ちなみに今年二軍優勝を果たした2チームを見てみるとロッテは森遼大朗、佐藤奨真、本前郁也、小沼健太と育成ドラフト出身の4人の若手投手が主力となっており、阪神も村上頌樹、西純矢、小野寺暖、小幡竜平、井上広大などの活躍が目立つ。育てながら勝つという意味では非常に価値のある優勝だったのではないだろうか。普段話題になることが少ない二軍での戦いぶりだが、チームの将来を考える上では極めて重要である。今後も2010年代のソフトバンクのような成功例を出すチームが出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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