
一方、「日本たばこ産業」などの製造業は、経営計画の見直しによる大型募集が行われているという。
「新型コロナを理由とせず、予め経営計画に盛り込んでいた早期・希望退職の募集になるかと思います。バブル期に何百人も採用し、今では数十人しか採用していない会社は、年齢構成比が逆ピラミッドになっています。製造業などは、ピラミッド型にしようとしているところがあります」(同)
早期・希望退職ではその規模に加え「勤続年数」にも注目が集る。30代の若手社員でも対象になるケースもあり、業績が芳しくないと年々、募集年齢を下げているという。
「45歳どこではなく35歳や、入社2年目以降は全員対象となる上場企業も出てきています。切羽詰まってきていることが目に見える指標の一つです」(同)
業績悪化が直接的な要因だとしても、大きな流れとして日本の人材活用の転換点にあるようだ。人事・戦略コンサルタントの松本利明さんは、労働基準法上は定年にできないが、事実上の「45歳定年」のようなことは、大企業は手を変え品を変えながら、すでに行ってきたことだと指摘する。
「政府側からすると、年金の支給年齢を上げるなどして社会保障の負担を抑えたいので、企業側に定年を延長して面倒をみてほしいわけです。一方、企業側からすると、40歳過ぎたら幹部候補とそうでない人の仕分けは終了しています。企業としては、成長事業に優秀な人材を確保する方にシフトしたい。出世しない人は定年まで居座ろうとする人が多く、そういう人を企業は、裏で『片道切符』と呼ばれる子会社への出向を命じて人材を動かしてきました。もはや、40歳以上まで残れること自体が、成長企業の中にはなかなかないのが実態になりつつあります。」
大企業ならば、子会社に出向する選択肢もある。しかし、中小企業の場合は出向先がないため、経営側は頭を抱えることになることになる。今いる会社に活躍の場がないとはいえ、すでに崩壊していといわれる年金制度に老後を頼る人生設計は不安が残る。人生100年時代、45歳を分岐点として働き続けるにはどのような道があるのか。