中小企業基盤整備機構は全国48カ所の拠点で、実費以外、無料で支援をする。木口さんによると、承継者は40代以下が多く、経験もさまざま。
米国ではビジネススクールの卒業者が2年くらいかけて買収先を見つけ、投資家の出資を受け、会社を買収して経営することがあるという。そうした手法の事業を日本で展開しているのがJaSFAの嶋津紀子社長。大手金融機関などと一緒に投資事業有限責任組合をつくり、所属する「サーチャー」と呼ばれる人たちが買収先を探す。
こうした投資事業有限責任組合は、投資家の出資で企業を買収し、経営する。組合の存続期間はだいたい10~15年、その間に買収企業を売却する必要がある。経営と所有は別で、経営者は残ることも多い。経営者が会社の株式を買い取ることもあるという。
嶋津さんは「最初の企業買収額とその後の売却額の差、つまりキャピタルゲインの2割くらいがサーチャーの取り分となるのが一般的」と話す。
こうした売買対象の企業について、嶋津さんは「日本に後継者不在の中小企業が12万社くらいはあり、それが一つのポテンシャル」と解説する。社長の年齢や、税理士など会社と付き合いのある人が見ていると、後継者が不在かどうかわかる。そうした情報から、「会社を売る気があるか、口説きに行くことはある」(嶋津さん)。
嶋津さんの会社が手がける企業買収の規模は数億円から20億円くらい。このように、投資家の出資で買収先を探すのはサーチファンドと呼ばれる。米国で年間100件くらいの規模があり、日本でその半分くらいできないか、嶋津さんは期待しているという。
後継者難の中小企業の問題は、経営したい人材とのマッチングだと、東京商工リサーチの原田さんは強調する。こうした官民の取り組みは、始まったばかりだ。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2023年2月3日号