世間の感覚からすると過激だったのかもしれませんが沢田さんも加瀬君も面白がってくれたし、何より曲がヒットしていましたから。演出面でも、テレビ局と交渉して雨を降らせたり、風を吹かせたり、周りの声は気にせず面白いと思うことをどんどん追求できました。

 阿久悠さんは僕の仕事をすごく喜んでくれてたみたいです。一度会いたいとも言われたんだけど、当時は僕もツッパってたから「あんまり意味ないよな」って断っちゃいました。でも亡くなってから書かれた本を読むと凄い人だったんだなと。阿久さんもよく映画を歌詞のモチーフにするじゃないですか。そういう手法や美的感覚は僕ととても共通するところがあるじゃないかと気付いたんです。ご存命のうちにいろいろお話しておけば良かったなと後悔してます。

早川タケジさん
早川タケジさん

中将:「サムライ」の軍服風衣装が一部の文化人から「ナチスを連想する」と批判を浴びました。あの衣装はどのような経緯で制作されたのでしょうか?

早川:当時、具体的にどのような批判があったかよく覚えていないんですが、けっして世を騒がせようというような魂胆はありませんでした。僕は当時話題になっていた「地獄に堕ちた勇者ども」、「愛の嵐」みたいな、ドイツを舞台にした退廃的な映画に興味をひかれていた頃でした。その影響で、ドイツの軍服が印象的だったので取り入れようと思っただけのことで、深くは考えていなかったんですね。

 はじめ「サムライ」というタイトルを聞いた時、軍服や三島由紀夫、高倉健を連想しました。スーザン・ソンタグが「反解釈」という本で「男性的な男の最も美しいところはどこか女性的である」と言っているんですが、そんな一節も影響したかもしれません。それで、軍服を脱いだらシースルーにスパンコールを貼り付けた唐獅子牡丹が出てくるというあの演出に行きつきました。無我夢中で面白いと思うことを追及した結果、ああいうものになったということなんです。軍服、盾の会の三島由紀夫、健さんの唐獅子牡丹…こんなアブない組み合わせが出来たのは我ながら上出来でした。

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面白くなれば衣装や演出はモノマネでもコスプレでもいい