65年に世界ドキュメンタリー会議なるものがモスクワで開催されることになり、当時テレビ東京のディレクターであった私が、なぜか日本の代表に選ばれ、モスクワに行くことになった。生まれて初めての海外旅行である。
ソ連に1カ月半滞在して、この国には言論・表現の自由というものが全くないことを知った。
帰国後、アナーキーになり、全共闘の幹部たちの言動に共鳴して、シンポジウムや勉強会に参加した。
だが、60年代の末期になると、政府に全く影響力を及ぼせず内ゲバが激しくなり、同志たちを総括と称して次々に殺戮(さつりく)した連合赤軍事件が明るみに出て、全共闘も全国の学生運動も解体してしまった。
そして、時を同じくして、文部省が高校の教師たちに、授業の内外を問わず、一切政治の話はするなと自粛を要請した。教師が政治の話をするのはタブーになり、学生たちも政治の話をするのは悪いことのように判断し、どんどん政治の話をしなくなったのである。
この原稿が店頭に並ぶのは衆院選の結果が出た後である。若者たちに人気の俳優らが投票を呼び掛けた「VOICE PROJECT」といった取り組みや、長引くコロナ禍で政治への関心を取り戻しているのか、約8割の若者が投票すると答えたインターネット調査もあったようだ。はたして投票率はどうなっただろうか。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年11月12日号