ジャーナリストの田原総一朗氏は、政治に関する話をしない日本の若者が、今回の衆院選でどう変化したか、その結果に注目する。
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10月27日の日本経済新聞夕刊で、若者の政治参加を促す団体「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子氏が、デンマークでは若い世代の投票率が80%を超えているのに、日本では若者の政治に対する関心があまりにも低い、と憂えている記事が気になった。
スイスから来日して芸能活動をしていた春香クリスティーンさんが数年前、私に、「スイスでも、イギリスやフランス、ドイツでも、学生が集まると政治の話題になり盛り上がる。だけど、日本の学生さんたちは全く政治の話をしない。なぜなのですか」と問うたことがあった。たしかに日本では、学生など若者たちは、あまり政治の話をしないようだ。
私たちが学生の時代は、集まれば政治の話で盛り上がった。それだけではなく、学生たちの多くが実際に政治運動に参加した。いたるところでデモが起き、全校ストライキとなる大学が数多く出た。そして、いわゆる全共闘が結成され、全国の大学生の半分近くがそれに参加した。
1970年に三島由紀夫氏と一緒に、自衛隊に決起を求めて自決した森田必勝氏は、早稲田大学の学生時代に右翼グループに属していた。そこで森田氏に、なぜ右翼グループに属しているのか、と問うと、「早稲田では学生の7割が左翼で、僕は“反体制”で頑張りたいので、そうなると右翼になるしかなかった」と答えた。
全共闘はベトナム戦争反対、自衛隊は憲法違反などと訴える、いわば反政府、反自民党で戦う左翼の学生たちであった。
実は私は学生時代から、日本共産党を最も信頼していた。日本共産党は太平洋戦争が敗戦というかたちで終わるまで、戦争に反対し続けていたからである。
そして、共産党が世界で最も素晴らしいのはソ連だと強調していたので、私もソ連は素晴らしい国だと思っていた。