落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「合格」。
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桃太郎は鬼ケ島に向かう途中、犬と猿とキジにきび団子を与えてお供にしました。「きび団子ください!」「やるからお供になれ!」「了解っす!」。なんて雑な。いいのか? もっと鬼退治に適した人材がいるんじゃない? ということで……「第一回 桃太郎のお供 オーディション」。審査員は加藤芳郎、近江俊郎、青島幸男、針すなお(敬称略)の皆さん。審査委員長は勿論、桃太郎。以下、妄想。
MC「全国から我こそ鬼退治のお供に!という強者が集まりました! エントリーNo.1、臼っ!」臼「自分は『猿かに合戦』での実績もあります!」首を傾げる審査員たち「ていうか無機物?」「お伽噺のかけもちってありなの?」桃太郎「ルックスがなぁ……」。見映えを気にする委員長。
MC「続きまして……牛の糞っ!」糞「臼さんがお供になるなら、ボクも!」審査員一同「糞で足元滑らせて、上から臼が落ちてくるという攻撃ははたして鬼に効くの……?」「糞がお供ってのは、もう『猿かに』で終わりにしないか?」桃太郎「糞ってあり得なくね!」。委員長はキレイ好き。
MC「次はエントリーNo.3、ハッカー集団アノニマスの皆さん!」一同「話が大きくなったね」「鬼にもサイバー攻撃が必要か」桃太郎「鬼ケ島、Wi−Fiあるの?」。ネット環境を気にする委員長。
MC「続きまして、メイウェザー!」一同「どれだけ金稼ぎに日本に来るんだよ」桃太郎「きび団子で来てくれるのかな? 決まったら花束だけはちゃんと渡そう……」。委員長は案外と世間の目を気にします。
沢山の参加者が集まるも、どれも帯に短し、襷に長し。
MC「次は……なんと鬼ケ島から『脱鬼ケ島』してきた鬼さん!」鬼「私なら鬼情報も知ってますし、お役に立てるかと」一同「鬼に臼は効きますか?」鬼「当たれば臼が割れますね」一同「鬼ケ島のネット環境は?」鬼「やりとりは基本手紙です」一同「ボクシングは強いですか?」鬼「鬼ですよ、僕ら。素手で人間に負けるとしたら、既に鬼ではない(笑)……ちなみに鬼ケ島は常に糞だらけなんで、ちょっとやそっとじゃ我々滑りませんよ(笑)」………桃太郎「ウンコは嫌だけど、合格! お供は鬼っ!!!」