イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 竹中氏によれば、菅氏から「安倍内閣の経済構想は経済産業省による構想で、これでは経済成長はできそうにない。そこでわが内閣は安倍内閣とは異なる経済戦略を打ち出したい。協力してほしい」と懇願されたようだ。

 たしかに安倍内閣時の今井尚哉秘書官、西村担当相、そしてプロジェクトの中核となった斎藤健元農水相らは経産省出身だが、私も関わっていて構想自体は悪くない。だから、西村担当相とコミュニケーションをとり、連携するかたちでやってほしい、と強く言った。

 すると、竹中氏は田原さんがおっしゃるならコミュニケーションをとりますと答えた。

 そして西村担当相やプロジェクトの幹部たちと何度も論議して、今年6月に構想が作り上げられた。そこで菅首相に、「この構想に取り組むのですね」と念を押すと、「もちろん取り組むが、現在は新型コロナへの対応で手いっぱいなので、これが一段落したら取り組む」と答えたが、結局取り組めないまま辞任となった。

 岸田内閣が、この構想を引き継ぐのか、それとも全く新しい構想を打ち出すのか。注目したい。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年11月26日号

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