axle御茶ノ水には、ほっと一息つける場所もある。たまには一人で考えをまとめてみる
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 短期集中連載「起業は巡る」の第2シリーズがスタート。今回登場するのは、フィリピンで安価な義足作りに奔走する社会起業家、「インスタリム」の徳島泰(43)。AERA 2021年11月22日号の記事の2回目。

【写真】インスタリムが開発した義足がこちら

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 さて、義足の値段が高いのは、究極のカスタム商品だからである。足の切断面は患者によって異なる。フィットしていないと、ものの30分で“靴擦れ”のようになり、痛くて歩けない。先進国には義肢装具士というフィッティングのプロがいて、その人にぴったりの義足を作る。だがフィリピンのような途上国では義肢装具士そのものが不足しており、1足50万円という値段になってしまう。

二律背反の鍵を解く

 徳島は考えた。義足はカスタムメイドでなければならない。だが値段を下げるには大量生産が必要だ。この二律背反をどう解くか。解はテクノロジーにあった。3Dプリンターやレーザーカッター、AIなどインターネットと融合した新しい生産手段を駆使して、一人一人の足に合う品を大量生産する。「マスカスタマイゼーション」だ。

 それは分業制によって自動車の大量生産を可能にした「T型フォード」以来の、ものづくりの常識を覆す挑戦である。一朝一夕に実現できる話ではないが、「ハードとソフトのエンジニアを経験し、工業デザイナーでもあり、起業の経験もある自分なら、もしかしてできるのではないか」。徳島はそう思った。

 15年に帰国した徳島は、再び起業の準備に取りかかる。JICAのODA事業に従事しながら慶応義塾大学の非常勤研究員になり、研究の一環として3Dプリンターを使った義足の開発に取り組んだ。そこに、徳島の夢を叶(かな)える2人の男が現れる。

 1人目は梶芳朗。東京大学大学院総合文化研究科修士課程を修了して、09年にソニーに入社。社内弁理士として5年ほどパソコンのVAIOや、家庭用ゲーム機プレイステーションの特許業務を担当した。その後、A.T.カーニーに移り、ハイテクや通信企業の事業戦略、海外展開などのコンサルに従事した。その後、ニュースサイトの「NewsPicks」を運営するユーザベースを経て、フィンテックの旗手と言われるマネーフォワードで事業開発などを担当するマネジャーになった。

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