他球団の編成担当は山下について、こう分析する。

「打撃センスは大げさでなく、天才レベルです。金属バットから木製に代わり、直球、変化球のキレが高校生と全く違うプロの世界で高卒1年目に首位打者を獲るなんて考えられない。山下の良い所は打撃の懐が深くて柔らかさがある。打てるポイントが多いので緩急にも崩されず広角に安打を打てる。足も速くはないが走塁が下手なわけではない。問題は守備ですね。一塁と左翼だと起用法がどうしても狭まる。個人的には指名打者で起用できるパリーグ向きの選手だと思います。パリーグは短所に目をつむって長所を伸ばす育成方針の球団が多い。年齢も21歳と大学3年生の年です。今の大学生で山下ほど打てる打者はなかなかいない。バットコントロールの巧さは各球団の編成担当が見てきた。複数球団が名乗りを上げてもおかしくないと思います」

 巨人で育成選手として再契約の打診を断り、新天地を目指すのは勇気ある決断だ。退路を断った山下はプロの世界で輝きを放てるか――。

(安西憲春)