芸能人やスポーツ選手が兵役を避けたいのは活動のブランクが生じるためだが、逆に兵役を経てイメージアップにつながったケースもある。11年に海兵隊に入隊したヒョンビンがその代表例だ。海兵隊は訓練が厳しいことで知られるが、志願して入隊し、世間の注目を集めた。入隊前はドラマ「私の名前はキム・サムスン」や「シークレット・ガーデン」など甘いマスクの御曹司役が多かったが、除隊後は映画「コンフィデンシャル/共助」、ドラマ「愛の不時着」など寡黙でたくましいキャラクターを演じ、新たな魅力で多くのファンを魅了している。
ただ、俳優は年を重ねても活動に大きく支障がない一方、K-POPアーティストは兵役を経て人気が落ちる傾向が見られる。できるだけ入隊を遅らせようとするのはそのためだ。
■軍隊の不条理浮き彫り
「BTS兵役特例」を議論する国会の国防委員会では、BTSがもたらす莫大な経済波及効果を考慮すべきだとの意見が出た一方、世論を考慮して慎重に進めるべきだとの意見も出た。
今年8月にネットフリックスで配信されたオリジナルシリーズ「D.P.─脱走兵追跡官─」は、脱走兵を捕まえる憲兵が主人公で、いじめやパワハラなど軍隊の不条理が浮き彫りになるドラマだった。配信が始まる少し前の5月には空軍所属の女性が上官のセクハラが原因で自殺した事件があり、軍への批判が高まっている中で「D.P.」が流行った。国防部はBTSの兵役に関しても世論を意識せざるを得ない状況だ。少子化で入隊者数の減少が予想されるなか、代替服務の対象を拡大するのに消極的というのもある。
法案が通らなければ、BTSのメンバーは22年末から軍に入隊することになる。BTSのような世界的スターが軍に入隊するだけでも韓国の国防を世界中に広報できるという見方もある。アーミーの中には「メンバーの軍人としてのかっこいい姿が見たい」という声もあり、入隊後にも注目が集まりそうだ。(ライター・成川彩(ソウル))
※AERA 2021年12月13日号より抜粋