当時の人たちのつぶやきからたどると、日中戦争が始まったぐらいまではみんないいもの食って、アメリカのファッションや文化に影響されたりしていた。その後、日独伊と三国同盟を結んで、それに対する懸念を抱いた人のつぶやきもあったけれども、ドイツがロシアに侵攻したり、カンボジアへ日本が侵攻していく。それを怒ったアメリカから鉄の輸出を止められ、そこから世の中の声は「アメリカを攻めなきゃいけない」になっていくんだけど、つぶやきには、それに賛成する人もいれば反対する人もいる。その軌跡を当時の人の日記やメモからの起こしたつぶやきで構成されているんです。
それを見てるときに、すごく今の世の中の状況に似ているんじゃないかと思った。世論って、ある一方向に誘導されたり、大きな力に影響されたりしていくわけじゃないですか。そこで真実がわかんなくなってきていて、その瞬間はいかにも真実みたいに思っていることが、年月が経って振り返ってみると間違っていたということもあるかもしれない。太平洋戦争なんかがまさにそうで、結局、様々な意見の人が当時もいたと思うんですね。だけど、「大東亜共栄圏を守るために戦争をやったんだ」って、いまだにずっと言ってる人もいる。
日本の国内では「万歳万歳」と戦地に人を送り出していたけど、戦地に行った軍人の日記にはとてつもない地獄がつぶやかれていた。こうして、世論って分断されていったわけですよね。
僕は歴史の授業は好きだったけど、教科書で勉強したこととも表層的には合致しているけれども、ひとつわかったのは、この令和の世の中に生きる僕たちと、昭和ひと桁から昭和10年代に生きた人たちの考えと生活の根本は何も変わってないということ。
ということは、また同じ過ちを我々は繰り返してしまうかもしれない。世論って考えると、太平洋戦争当時より今のメディアからは情報もいっぱい出されてくるし、その情報過多な状態によって誘導され、気に入らない人や物事に対して「あいつを潰せ!」とか言うことになり過ぎている気がする。実は、「それって、危険なことなんじゃないか」って、今回、番組を見て改めて考えてしまった。