風間:彼が紡ぎ出すセリフをひもといていくのは、厄介な作業でして……。

林:私、台本を読ませていただきましたけど、ぜんぜんわかりませんでしたよ……。

風間:僕は2019年にシアターコクーンで「唐版 風の又三郎」という唐戯曲を、初めて金さんの演出でやったんです。そのとき金さんは、唐十郎の詩的世界をビジュアル的に演出したんですね。そうしたら、お客さんからは「わけわかんないけど、感動したよ」という感想が多かったですね。

林:コロナの影響で軒並み中止になっていたお芝居が、このごろは再開されるようになりましたね。私もできるだけ行くようにしているんですが、そうすると若い人たちで満席なんです。人の肉声を聴く喜び、間近で人を見る喜びにみんな酔っているという感じがしました。

風間:ライブの魅力って、演劇なら、役者が大声を出して汗をかいて、走り回っているのを見るだけで、同じ空間を共有できることじゃないですか。だから僕、絶対に演劇はすたれないな、と思っているんです。

林:ドキドキしながら前のめりになって見るというあの緊張感、あれは演劇ならではですよね。風間さんは、もともと唐十郎さんと親しかったんですか。

風間:僕はご存じのように「つかこうへい事務所」ですからね。唐さんはつかさんを認めていたみたいですけど、つかさんは唐さんの「状況劇場」とかほかの劇団には、あんまり関心がなかったんじゃないですか。つかさんには「よその芝居なんか見る必要ない」と言われていたので、教えを守って、よその芝居はいっさい見に行ってなかったんです。

林:えっ、本当ですか。唐十郎さん、稽古場ではいかがですか。

風間:しっかり稽古を見て、泣いていましたね。

林:これでまた何度目かの唐十郎ブームが来そうですね。

風間:金さんが主宰している「新宿梁山泊」では、唐さんの作品の「少女仮面」というのが12月公演として控えているんです。

林:亡くなった李麗仙さん(唐さんの前妻)がなさっていたお芝居ですよね。私は「梁山泊」のようなとがったお芝居にはちょっと手が出せないというか、体力もいるし、年とると見るお芝居も保守的になってよくないですね。

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