ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「総合格闘家・朝倉未来」について。
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「アイドル」も「カリスマ」も、本来は時代や世の中が作り出す「現象」の産物ですが、それでも生まれながらにしてその気質やポテンシャルを備え、時にはそれを自覚している人も少なくありません。最近は表現や発信の場が増えたことで、世間も彼らを「見つけやすく」なりました。
そんな中、昨年ぐらいから注目している「カリスマ」がいます。総合格闘家の朝倉未来(あさくらみくる)さんです。今やユーチューバーとしても高い人気と影響力を持つ愛知県豊橋市出身の29歳。とかくカリスマ的スタンスを標榜する人たちが多い格闘技界ですが、彼ほど明確なカリスマ性に溢れた人材は久しぶりではないでしょうか。
成功の形が数値化され、何をもって成功者とするかの判断基準も万国共通になりつつある現代において、昔気質(アナログ)な「ファイター」としての成り上がり精神を、至極デジタルな「ユーチューバー」という舞台で昇華させる。ファイターにとって、「結果」と同じくらい重要なのが「物語(プロセス)」であるならば、格闘家・朝倉未来とユーチューブの組み合わせは、まさに理想形と言えるでしょう。実際に、彼が描き掲げたシナリオは、面白いぐらいのスピードで達成・実現されており、そのカリスマ性は日に日に大衆的になりつつあります。中でも、先日のネット番組における企画『朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円』は大きな注目を集めました。
しかし、注目と同時に激しい非難の対象にもなってしまっているようです。格闘家を含め勝負の世界に身を置く人というのは、勝っても負けても「知ったような口」を叩いてくる連中と共存しなくてはなりません。観ているだけのくせに監督気分で能書きを垂れたり、観てもいないくせに後から難癖をつけてくるような人たちの「熱量」によって生かされているとも言えます。それに加えて昨今は、何の熱量も持ち合わせていない「一般世間様」からの声にも対峙しなければならないという、非常に面倒臭い世の中です。