特殊な装置を使って高級車を盗んだ大阪府堺市の男(38)に、4年4カ月の実刑判決が言い渡された。自動車盗難の手口として急激に増えていると言われるその装置とは――。
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神戸地裁の判決が出たのは12月10日。報道によると、男は仲間とともにレクサスやアルファードといった高級車などを繰り返して盗み、2事件(被害総額約750万円)で起訴された。その際に使用していたのが「CAN(キャン)インベーダー」と呼ばれる装置だった。
自動車のセキュリティーに詳しい加藤電機の加藤学社長が説明する。
「現在の車はコンピューター制御されていますが、外部からアクセスできるポイントが何カ所かあります。そこに装置を接続して信号を流すことでドアの開錠やエンジンの始動が一瞬できてしまう。それがCANインベーダーと呼ばれる手法です」
狙われるのはヘッドライトの裏側部分にある接続ポイント。車の正面にある網や格子状のフロントグリルを外せば、容易にアクセスできてしまう場所にある。
「フロントグリルを外してCANインベーダーから延びるケーブルを接続ポイントにつなぎ、エンジンを始動するまでの時間はほんの数分。ドアをこじ開けたり窓ガラスを割ったりすることもなく、窃盗団は静かに盗み去っていきます」(同)
CANインベーダー装置は手のひらに収まるぐらいの大きさ。男が犯行に使ったものは、見かけはモバイルバッテリーと区別がつかないタイプだった。専門家によると、ドアの開錠やエンジンを始動させるには車が持つ正規の信号と一致させる必要があるものの、難しい技術ではないという。
海外では製造者不明のこうした装置がネット販売され、カギを無くした際の非常用装置として簡単に手に入る。装置を販売するロシアなどの複数の業者に取材したところ、40万円程度から購入でき、すでに日本にも数多く販売しているという。現状では装置を所持していても違法ではないため、取り締まることもできない。