過労死等防止対策推進協議会では今年8月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直し案がまとめられ、閣議決定された。協議会には、労働の専門家、法律家、経営側の経団連、労働者側の連合などからも代表が選ばれて、参加している。
幸美さんも、会議では積極的に意見をしてきた。その感想をこう話す。
「大綱の見直しは一つの成果だと思います。中には『法整備、労働環境をよくしていただいた』という声がありました。しかし、私は現状では、まだまだ生ぬるい、過労死や労働環境による精神的な病気は防げないと思い、発言をしてきたつもりです。厚労省の担当者にも理解はして頂いていると思いますが『法律もありまして…』というニュアンスの言葉が出ることもある。私の会議での発言は、空気が読めないと思われているかもしれないが、まつりのような悲劇を繰り返してほしくないからです」
今年5月の協議会では大綱について幸美さんはこう厳しく指摘する。
「私は何年までに過労死をゼロにするという目標を立ててほしいと思っています。娘は最初の大綱の制定の5か月後に亡くなりました。娘が亡くなった当初、もっと早く防止法や大綱ができていれば、助かったのではないかと考えたこともあります。残念ながら6年間の取組の中で、仕事が原因で貴い命が失われ、若い人の心身の健康が損なわれる事案は増加しており、過労死ゼロには程遠い。どうしたら遺族の声が人々に届くのか、悲痛な思いでおります。遺族として強く言いたいのは、過労死につながる長時間労働、ハラスメントなどをどうやって根絶していくのか、具体的に対策を実行していってもらいたいと思います」
まつりさんは学生時代、週刊朝日編集部でアルバイトをしてくれたので筆者もよく知っていた。頭は抜群に切れ、1を言えば10を理解する人だった。
ある時、筆者が編集部で書いた記事をチェックしていると「ほら、ここに誤字が」と横目で見ながら、校正箇所を指摘してくれたまつりちゃん。
就職活動時には「週刊朝日で働きたいけど、電通にも合格した」と相談もあった。
「まず、電通で仕事してみたらどう? 週刊誌の記者は新卒でなくても、いつでも転職できるから」と勧めてしまったことが、今も悔いが残る。
ご冥福をお祈りいたします。
(AERAdot.編集部 今西憲之)