漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「アトムの童(こ)」(TBS系 日曜21:00~)をウォッチした。
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潰れかけの玩具メーカー「アトム玩具」と、若き天才ゲーム開発者・安積那由他(あづみなゆた・山崎賢人)が手を組み、巨大IT企業へ挑んでいく物語。
おなじみTBSの日曜9時は、だいたいいつも良いおじさんと悪いおじさんで構成されている。良いおじさんは「ものづくり」を大切にする下町の小さな会社を経営。
対する悪いおじさんは金にモノを言わせる大企業。その腰ギンチャクである金融機関には、小悪党おじさんが勢ぞろい。
大河ドラマ並みの重厚な音楽で、血管ブチ切れそうなおじさんの顔面がドーン。おじさんの汗と涙と人情があふれまくり、最後は倍返しのカタルシスが爆発して香川照之が土下座する。
見た、何度も見た。でも今回はひと味違うのだ。扱うアイテムがネジでも足袋でもなくゲーム。そしておじさんはおじさんでも、悪いおじさんがオダギリジョーなのだ。
でもね、そもそもの配役は香川照之だったんだから。TBSはそんなにも香川に土下座させたいのか。暮れの「紅白」で石川さゆりが歌う「津軽海峡・冬景色」と「天城越え」くらい、見たような気がする香川の土下座。
もういい加減おなかいっぱいですって時に、まさかのリアル土下座案件で香川が降板するはめに。そこでオダジョー降臨とは、これが「禍転じて福となす」ってヤツ?
今作でもやはり、良いおじさん=「アトム玩具」の社長(風間杜夫)は、次々とひどい目に遭う。初回から金策に走り回り、病に倒れてマヒが残り、漏電で会社は全焼だ。
そんなどん底の中、狙いを定めたかのように大手IT企業社長・興津(おきつ・オダギリ)がやって来る。
「今すぐうちにこの技術を譲って頂きたい」
興津は「アトム」が持っている特許を奪いたいのだ。これが香川照之だったら、絶対香川が放火しただろって思うんだけど、日曜9時に見慣れぬオダジョーだと、いい感じに腹の底が見えない。