同志社大学大学院准教授 三牧聖子(みまき・せいこ)/専門は米国政治外交、政治思想研究。著書に『戦争違法化運動の時代 「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』など(写真:本人提供)
同志社大学大学院准教授 三牧聖子(みまき・せいこ)/専門は米国政治外交、政治思想研究。著書に『戦争違法化運動の時代 「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』など(写真:本人提供)

 中国では共産党大会での胡錦濤(フーチンタオ)前国家主席の退場劇が話題になりました。習近(シーチンピン)平国家主席が中国の集団指導体制を実質的に放棄し、個人独裁を強めていることに、党内にも異論があることを世界に知らしめました。さらにその後、ゼロコロナ政策に公然と異議を唱える「白紙デモ」も起き、国民が習氏の強権的な政治に完全に賛同しているわけではないことが可視化されています。そうした内部の変動も見ながら、中国との関係を構想していくことが重要です。

 米ツイッターを買収したイーロン・マスク氏は、SNSという言論空間の行方という点で注目されます。彼は言論の自由絶対主義者を自称し、憎悪や差別を拡散するアカウントの凍結を解除してきました。彼の説く「自由」は信奉者も多い。たとえマスク氏がCEO(最高経営責任者)から退いても、反動が起きる可能性があります。

 そのマスク氏がアカウントを復活させた米国のトランプ前大統領に代わり、次期大統領選の共和党候補者として注目されているのが、デサンティス・フロリダ州知事です。経歴や外見はきらびやかですが、子どもが教室内で性自認などを学んではいけないとする通称「ゲイと言うな法」を成立させるなど、やることは「トランプ以上」。トランプ氏が退場しても「トランプ的な政治」が若い政治家に受け継がれる可能性を示唆しています。

 一方の民主党では、中間選挙で銃規制強化などを訴え、Z世代のフロスト下院議員(フロリダ州選出)が誕生しました。長く憲法で認められてきた中絶の権利さえも脅かされる今の米国への危機感から、接戦州ではZ世代の7割が民主党に投票しました。そのZ世代が議員になり、民主党にどのような風を吹き込むのか、注目されます。

■三牧聖子さんが選ぶ10人

ボロディミル・ゼレンスキー(44) ウクライナ大統領

ウラジーミル・プーチン(70) ロシア大統領

ジョコ・ウィドド(61) インドネシア大統領

レジェップ・タイップ・エルドアン(68) トルコ大統領

ヤン・ラチンスキー(64) ロシア人権団体「メモリアル」代表

マフサ・アミニ(22) イランでヒジャブ着用をめぐり死亡した女性

胡錦濤(80) 中国前国家主席

イーロン・マスク(51) 起業家

ロン・デサンティス(44) 米フロリダ州知事(共和党)

マックスウェル・フロスト(25) 米フロリダ州選出下院議員(民主党)

(構成/編集部・小長光哲郎)

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