マギー 朝ドラのいいところだね。「朝ドラマジック」じゃないけれど、特に役作りどうのこうのじゃなくて、新幹線に乗って、大阪のNHKに入って、先に支度している人の顔見たら、もうその役になれる、というか。
松下 不思議な体験でした。
マギー あの飲み屋での帰り際に聞いてびっくりしたのは、洸平くんが関西人ではなかったこと。出身はどこなん?と言ったら「東京」だと。ええ!? 関西弁めっちゃうまいやん!!と驚いた。耳がいいよねぇ。
松下 いえいえ、皆さんに影響されただけです。
マギー 洸平くんに対する予備知識が少なかった分、今でも僕の中では「ハチ」なんだよね。
松下 朝ドラが終わり、フジテレビ系ドラマ「知ってるワイフ」で再会した時、僕は銀行員の役だったのでビシッとスーツを着て座っていたら、マギーさんが「ハチ、何をかっこつけてんねん」。いや僕、こういう役なんです、と(笑)。
マギー そうだった(笑)。これからも、近所のおじさんと親友の息子という関係はずっと変わらないと思うな。
松下 そうですね。コロナ禍で中止になる舞台や撮影も多くありました。この間、どんな想いで芝居に向き合ってこられましたか?
マギー 緊急事態宣言が出て、本当にずっと家にいた期間を経て、いよいよ撮影が始まった時に、ああ、俺はやっぱりここが本当に好きなんだなと思ったんだよね。あの日、僕は初心に戻った。この仕事が好きだ、大好きだなと思った。
松下 僕も現場に立っている間ずっと「ありがとう」という思いでいっぱいでした。ひとつの公演、ひとつの現場の価値を改めて噛みしめていました。コロナ禍が終わり、いつの日にか、昔こんなことがあってね、と伝えたいけれど、うまく伝わるんでしょうか。説明がつかないものと闘っているような気がしています。
マギー なんせ俺は早いとこ笑いも交えた昔話みたいにして語れる世の中になってほしいって思ってる。「知ってるワイフ」の撮影中、フェイスシールドをカットがかかるたびに「フェイス!」と言いながら着けたこととか(笑)。
松下 ありましたね。銀行の机の一番下の大きな引き出しにフェイスガードが入っていました。外し忘れて本番を迎えたトップバッターが、確かマギーさんでした(笑)。ご飯もそのまま食べてましたよね? お箸がフェイスガードにコツンと当たって、おかずがぽとんと落ちて(笑)。
マギー そうそう(笑)。毎日、鼻をぐりっとする検査をしてから劇場に入っていたんだよ、とか。今は日々、感染対策として当然のようにやっていることも、「マジすかぁ?」「やってたんだよぉ」って笑いながら下の世代に話せるようになったらいいよね。
(構成/編集部・古田真梨子)
※9月26日発売の「AERA 10月3日増大号」では、対談の続きを掲載しています。