作家の室井佑月氏は、立憲民主党・泉健太代表の発言に苦言を呈する。
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この原稿を書いているのは9月4日だ。あたしは前日に、コロナの自宅療養が明けた。ひとりぼっちの療養中は、やることもないのでニュースばかり見ていた気がする。しかし、旧統一教会問題も、国葬問題も、何もかもがまったく進展しないのだった。毎日、似通った性犯罪がニュースになっているし。家に篭(こ)もっている自分を含め、世の中の時間がすべて止まってしまったようだった。
そんな中、電話で不可解なやり取りをした。
一件目は、夫からの電話だった。長岡の家に蝙蝠(こうもり)が出た。彼はあたしと離れて東京で療養していた。彼は医師でもあり、疾患持ちのあたしを心配し、日に4度くらい電話をしてきた。蝙蝠がやってきて、廊下をぶんぶん飛び回っている日も。
あたしは蝙蝠に触れたくないので、ゴミ袋を頭からかぶり、寝室へ移動し、そこで充電していた携帯電話に出た。今、大変なことになっている旨を告げた。これじゃ、トイレにも行けないと。すると彼は、
「そんなに長いこと、飛び回るかな? もう飛んでないんじゃない?」
という。寝室のドアをそっと開けたら、あたしの顔の数センチ先を蝙蝠の羽がかすめた。悲鳴をあげた。
彼はのんびりした口調でつづけた。
「良かった、元気そう」
あたしは腹を立て、通話を切った。ちなみに、あたしは彼の都合で長岡で暮らしている。
もう一件は、以前からの知り合いからの電話だった。考え方が似ているところがあり、たまに彼の活動の協力をする、という緩い関係の。
知人はあたしに選挙の応援に来てくれないか、と述べた。あたしは今、コロナにかかっていることを告げた。しかし、知人の話は止まらなかった。
今回は絶対に負けられない選挙であると。しょうがないので、全部、聞いてからもう一度いった。
「あたし、コロナなんで」
そして通話を切った。