
──撮影前には、アクションスクールに通ったり、ドリフト技術など運転の練習をしたり。スタントチームとも何度も話し合いが行われた。事前にCGで車を運転する時に首や体はどう動くのか、その時の手の角度はどうなのかなど、細かく分析をした上で撮影を重ねていった。視線の配り方などは、テクニックを振り付けるチームから指導があったそうだ。
撮影に入る2、3カ月前から1週間に2、3回アクションスクールへ通いました。そこでは、まずは身体的な訓練と体力をつけました。というのも、ウナは決して専門的に相手と闘う訓練を受けた人物ではないので、彼女ならではのエネルギーを強く持たせる必要があると考えたんです。ですから、現場で監督がこういうふうに動いてみようかと言われた時に、すぐに体を動かせるように基本的な体力作りと基礎訓練とを受けていました。
──激しいシーンの連続だけに、撮影中にアザは絶えなかったとか。
すごく大きなけがはなかったんですが、実際に体を張って激しいアクションをしなくてはいけないシーンがたくさんありましたので、アザができてしまうのは当然かなと思っています。私としては本当に撮影に入り込んでいたので、撮影中に痛いとかつらいとか思ったことはなく、本当に楽しく臨めました。撮影が終わってシャワーを浴びて初めて「こんなところにも、こんなところにもアザがある、いつできたんだろう?」と気づいたくらいでした。
──オンライン取材であっても笑顔を絶やさず、丁寧に答えてくれたパク・ソダム。演技を始めた頃から、「将来どんな俳優さんになりたいですか」と尋ねられるたびに、「(すばらしい俳優になるために)人間的な俳優でありたいと思います」と答えてきたと言う。彼女をひもとくキーワードは「謙虚」という言葉に集約できそうだ。
演技は決して一人では成し得ないものだと私は思っています。俳優、スタッフを含め、たくさんのいろんな人が関わってくれて、一緒に作り上げていくもの。よく(仲の良い)大先輩俳優のシン・グ先生(86)が、「いつも謙虚でいなさい」と言ってくれます。「何をするにしても、これから演技を続けていくわけだし、人間パク・ソダムとしても、俳優パク・ソダムとしても、常に物事に謙虚でありなさい」と。この映画も本当にたくさんの人の力のお陰で日本でも公開が決まり、こうやってインタビューの席も設けていただけました。インタビュアーの方がこのシーンが良かったねと言ってくださることを聞くと、私自身もすごくうれしくなります。
これからも演技人生を続けていきますが、初心を忘れることなく、人間パク・ソダムとしても謙虚に物事を捉えてちゃんとその気持ちに根を下ろして進んでいきたいと思います。
──そう宣言してくれた彼女にとっての2023年の目標を最後に聞いた。
よりたくさんの人に会える機会があればうれしいなと思います。というのも、私は少し前に体を壊したため、たくさんの人に会えない時期が長くあり、ご心配をかけてしまいました。今年は本当に心から笑える健康な姿を皆さんに見ていただけるようになりたいと思います。ですから、皆さんもぜひ身も心も健康でいらしてください。
(聞き手/ライター・坂口さゆり)
※週刊朝日 2023年1月27日号
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