従来株より感染力が高いが、重症化しにくいと言われるオミクロン株。細胞実験で肺ではなく、鼻やのどのある「上気道」で増殖する特徴が明らかになった。ただし、感染者の絶対数が増えれば重症患者の人数も増えるので油断できない。AERA 2022年1月24日号から。
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オミクロン株で重い肺炎が起きにくいのは、ヒトの体内のどの細胞に感染しやすく、どこで増殖しやすいかというオミクロン株の特徴と関係している可能性のあることが、英ケンブリッジ大学や宮崎大学などの研究チームや英グラスゴー大学の研究チームなどによる、細胞を使った実験でわかってきた。
オミクロン株はデルタ株などに比べて、肺の細胞よりも鼻やのどのある上気道の細胞に感染しやすかった。しかも、肺よりも上気道で増殖しやすいこともわかった。
その一因は、ヒトの細胞にある酵素「TMPRSS2」と、ウイルスの表面にある突起状のたんぱく質の関係にあるらしいことも明らかになってきた。これまでのウイルスは、ヒトの細胞に感染する際に突起状のたんぱく質がこの酵素で切断され、開裂することで、ヒトの細胞に感染しやすくなっていた。
ところが、オミクロン株の突起状のたんぱく質は、TMPRSS2と結合しにくく、開裂しにくかった。オミクロン株は、この酵素とは関係ない経路でヒトの細胞に感染していると考えられる。
TMPRSS2は、肺の細胞には多く存在するが、上気道の細胞では少ない。このため、従来株は肺の細胞によく感染し、増殖していたとみられる。
逆にオミクロン株は肺の細胞には感染しにくく、肺では増殖しにくいため、肺炎が重症化しにくい可能性がある。その一方で、上気道でよく増えるため、感染した人が呼吸したりしゃべったりした時に体外に排出されやすく、感染が広がりやすい要因の一つになっているのかもしれない。
■子どもの感染増対策
オミクロン株は病原性が比較的低いとしても、感染は従来株よりも広がりやすい。重症化リスクの高い人は一定の割合でいるため、感染者数が増えれば、入院して治療する必要のある重症患者の絶対数も増える。1日当たりの新規感染者数が140万人を超えた米国では、1月5~11日の7日間の1日当たりの新規入院患者が平均2万637人と、前の週より24.5%増えた。しかも医療従事者の感染も増え、医療提供体制が圧迫されてきている。