水道を巡る事故が相次ぐ。背景には、自治体の財政難や人手不足がある。耐用年数を超えた古い施設が増え、更新もままならない。人工知能(AI)を使った分析結果から、水道管にとってリスクが高い自治体を探った。
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昨年10月、和歌山市の紀の川に架かる「水管橋」が崩落した。水道管が通る橋が崩れ、管から水が噴き出す映像は、全国に衝撃を与えた。約6万戸が断水し、解消に約1週間かかった。並行する道路橋は仮設の水道管が置かれたため通行止めとなり、今も車が通れない。
橋のアーチ部分から水道管をつる鋼管製の「つり材」と呼ばれる部材に水が入り、腐食して切れたことが事故の一因とみられている。市は水管橋の部分的なかけ替えなど、復旧に16億円ほどかかると見込む。
水道管の事故は決してひとごとではない。厚生労働省によると、2018年度に全国で約2万件。1日あたり55件前後になる。大ニュースにはならなくても、断水や減水、濁水といった事態は住民にとって一大事だ。
日本は少子高齢化がさらに進み、人口も減る。自治体が水道事業に回せる財源や人材は乏しくなり、水道管そのものの高齢化も進む。国内の水道管の多くは高度成長期に作られた。厚労省や公益社団法人「日本水道協会」によると、法定耐用年数の40年を超えた水道管は全国に約13万9千キロあり、総延長、約72万7千キロの19.1%を占める。
法定耐用年数は「地方公営企業法にもとづいて保有資産の減価償却費を計算するうえでの基準年数で、あくまで会計上のルール」(厚労省)という。年数を過ぎても罰せられたり、取り換え義務が生じたりはしない。ただ、水道管の新しさを測る目安の一つにはなる。
これに対し、水道管(管路)を新しいものに取り換えた割合を示す「管路更新率」は年々下がり、19年度は0.68%にとどまった。このペースだと、国内すべての水道管を更新するのに130年以上かかる。厚労省は、法定耐用年数を超えた水道管を今後20年で更新する場合、年約6千キロ、必要な更新率は0.88%と試算する。