――自分の美学にこだわっていますよね。
「美学か何か知らんが、俺は俺の生き様しかできないから。『あなたの専門は何ですか』と聞かれたら、『石原慎太郎です』と言うしかない。それが、たまたま知事をやっている」
――半年間の知事在任で、この実績を見てくれ、というのは?
「そんなもの、わからないよ。ただ、都立高校の学区制はやめるし、中小企業向け債券市場は今年度中にやるし、それからディーゼル車の撲滅もしようと思っているよ。ディーゼル車が出す『すす』を入れたペットボトルを議場に持ち込んで、『一日にこれが都内で十二万本出ている。こんなもん、ふりかけにしてメシにかけて食うわけにいかないだろ』ってやったよ」
■国を憂えているんだよ
――厳しい環境基準を設け、国を引っ張る手法は、美濃部亮吉元知事に似ています。
「そうそう、それは美濃部の功罪の功だね。見習っていい。政策の苗なんて、すぐ植えられるんだよ。問題は、どこまで育つか。一年で育つのもあれば、十年のもある」
――行政は予算化、条例化して根づきます。福祉施策の見直しなど、懸案処理はこれからですね。
「そう。これから予算編成するわけだからね。この一、二カ月が正念場なんだ。いずれにしても削るんだから、都議会は総論賛成、各論反対になると思うよ。でも、『そうはいきませんよ』と言わなければならないよな」
――米軍横田基地問題は?
「それは軽々には言えないね。ただ、過去にブッシュ(元米大統領)は一回、日本に返す決心したんですよ。間違いなく。どうして、みんな情報を取らないんだろうねえ。役人なんか知らない情報はいっぱいあるんだから」
――「本音発言」が受けています。
「国民、都民には、いろんなフラストレーションがあるし。まあ、そろそろ日本もアメリカ信仰を捨てたらどうか、ということ。アメリカン・スタンダードをグローバル・スタンダードと訳して、ハイハイって言ってる日本は米国の家来だよ。米国に勝手気ままなことをやられてるんだよ」
――知事でしたっけ、首相でしたっけ、という印象です。
「いいじゃない。元国会議員が国を憂えているんだから」
(聞き手・編集部・坪井ゆづる)
※AERA 1999年11月1日号から