
「映画の舞台になっているのは2005年ですが、監督は、戦争を経験した最後の世代の人たちがまだ生きているうちに、日本人と中国2世の間に生まれた家族愛を描きたかったようです」
史実を基にした映画は、エンターテインメントであると同時に、人間の感情を後世に残していく資料という側面も担う。
「そういう意味では、切実な映画だと思います。戦争は後々まで人々の心に不幸や悲しみを刻みますし、二度と繰り返されてはいけないものですが、この映画自体は、すごくあったかい話になっています。それは、台本を読んだときに監督の世界観としてイメージできたものに近かったですね。少しドキュメンタリーの要素もあって、人捜しなんで謎解きっぽい雰囲気もちょっとして、けっこう笑えるところもあるけれど、ヒューマンなんとかとか、なんとかコメディーとか、わかりやすい映画のジャンルにはカテゴライズできない(笑)。物語の中にパーンと引っ張っていく力が台本から感じられて、分解好きの僕としては、『どんなふうに撮るんやろうな』とワクワクしていました」
中国人の監督からは、國村さんのヒューマンな面をクローズアップされた格好だが、6年前に出演した韓国映画「哭声/コクソン」では、村人が家族を惨殺するという異常な事件が発生した田舎の村の、山中に住む“謎の男”を演じ、ナ・ホンジン監督からは、人間のえたいの知れない業のようなものを引っ張り出されていた。
「あの作品には、監督の宗教観なんかも盛り込まれていて、『素晴らしいのも怖いのも人間』といったテーマが潜んでいるのを、僕なりに感じていました。今回は、人間の普遍的な愛情とか優しさが感じられる作品で、ポンフェイ監督の人となりがそのまま表れている。映画に登場するお豆腐屋さんも、中国人の夫婦も現地に住む人で、中国人が踊る踊りも、演出をしたわけではない、そのままの踊りをそのまま記録して、公開しています」