映画「再会の奈良」は4日からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 (c)2020“再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)
映画「再会の奈良」は4日からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 (c)2020“再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

「映画の舞台になっているのは2005年ですが、監督は、戦争を経験した最後の世代の人たちがまだ生きているうちに、日本人と中国2世の間に生まれた家族愛を描きたかったようです」

 史実を基にした映画は、エンターテインメントであると同時に、人間の感情を後世に残していく資料という側面も担う。

「そういう意味では、切実な映画だと思います。戦争は後々まで人々の心に不幸や悲しみを刻みますし、二度と繰り返されてはいけないものですが、この映画自体は、すごくあったかい話になっています。それは、台本を読んだときに監督の世界観としてイメージできたものに近かったですね。少しドキュメンタリーの要素もあって、人捜しなんで謎解きっぽい雰囲気もちょっとして、けっこう笑えるところもあるけれど、ヒューマンなんとかとか、なんとかコメディーとか、わかりやすい映画のジャンルにはカテゴライズできない(笑)。物語の中にパーンと引っ張っていく力が台本から感じられて、分解好きの僕としては、『どんなふうに撮るんやろうな』とワクワクしていました」 

 中国人の監督からは、國村さんのヒューマンな面をクローズアップされた格好だが、6年前に出演した韓国映画「哭声/コクソン」では、村人が家族を惨殺するという異常な事件が発生した田舎の村の、山中に住む“謎の男”を演じ、ナ・ホンジン監督からは、人間のえたいの知れない業のようなものを引っ張り出されていた。 

「あの作品には、監督の宗教観なんかも盛り込まれていて、『素晴らしいのも怖いのも人間』といったテーマが潜んでいるのを、僕なりに感じていました。今回は、人間の普遍的な愛情とか優しさが感じられる作品で、ポンフェイ監督の人となりがそのまま表れている。映画に登場するお豆腐屋さんも、中国人の夫婦も現地に住む人で、中国人が踊る踊りも、演出をしたわけではない、そのままの踊りをそのまま記録して、公開しています」

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