鎌倉といえば豊島屋の「鳩サブレー」ですが、ここの社長さんが落語好きでよくお差し入れを頂きます。社長は鎌倉の大仏さんを思わせる巨体でスキンヘッドでいつもニコニコ顔。ご縁があってコロナ禍以前、豊島屋さんの新年会で全従業員の前で落語をやらせて頂いていたのですが、社長が最前列のかぶり付きで一番笑ってくれます。宴会になると若い女子社員は私の所に来ず、みんな社長と写メを撮ってキャーキャー……ちょっと悔しいんだな。この社長は2013年に鎌倉の海水浴場の命名権を購入しながらも「昔から親しまれている名前のままにします」と発表。やることが粋なんだな。
こないだも日曜日の昼の落語会が終わり、湘南新宿ラインで帰ろうとちょっと贅沢してグリーン車内。自分へのお土産に買った鳩サブレー齧(かじ)りながら帰宅し、『鎌倉殿の13人』観ながら「政子の目、今日もキレキレだなぁ」とぼんやりしてたら……あのまん丸な目が社長のまぁるい顔に見えてきて……。どちらも輝きがケタ違いで「疫病退散」に効果がありそう。なんとかなりませんかね、政子さん、久保田社長!(柏手)
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!
※週刊朝日 2022年2月18日号