落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「鎌倉」。
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ています。私が一番注目してるのは、小池栄子さん演じる北条政子の飛び出さんばかりの眼球。あの目ヂカラ、なんでしょう? あれから丸いもの全てが政子の目ん玉に見えるのです。電球を見ても、イクラを見ても、地球の衛星画像を見ても……政子の目。美しいのよ、剥いた目が。
鎌倉へは度々仕事で伺います。湘南新宿ラインで池袋から1時間ちょっと。本を読むにも、原稿を書くにも集中力が続くちょうどいい移動時間。二つ目になりたての時、「かまくら落語会」という老舗の落語会に初めてお手伝いに行きました。鶴岡八幡宮の参道脇にあるちょうどいい古さのちょうどいい大きさのホール。お客さんは土地の落語好きの御年配がほとんどで、むやみに馬鹿笑いするでもなく、全く無反応でもない、ちょうどいい笑いが場内に広がるちょうどいい落語会。
材木座の光明寺で開かれている「材木座らくご会」。北鎌倉の円覚寺内の佛日庵の「北鎌倉落語会」。お寺の本堂はお客さんとの距離も近く、ほとんど地声。ホールでなく、御本尊を背にして高座からお客さんの顔を見ると、みな無条件で笑顔なのが不思議です。基本笑顔からのスタートっていうのはありがたい。材木座は「小学生以下無料」なので、最前列に子供が大勢キャッキャッしてて、釣られて大人も笑い出します。この二つの落語会では滑ったことがない。スランプの時に呼んでもらえると有り難い、夢のような落語会です。
「鎌倉はなし会」は鎌倉芸術館でよく開催されていますが、最寄りは大船駅なので注意が必要です。私と師匠・春風亭一朝の親子会を定期的に開いてくれます。大船駅から会場までの道のりが好きなんだよな。徒歩10分弱。芸術館は元・松竹大船撮影所跡。「昔のスタッフや役者さんも、ここを歩いて撮影所に向かったんだろうなぁ」なんてことを思いつつ、ブツブツ噺を口の中で繰りながら向かいます。