「そういう面倒なことは全部、僕らがやりますから、どうぞ気軽に再生エネを使ってください、というのがウチのビジネスモデルなんです」
世界各国が「カーボンニュートラル」へ舵(かじ)を切るなか、米アップルのように取引先にも再生エネの利用を求める動きがある。安く確実に再生エネが使えるデジタルグリッドの仕組みは、大企業にとっても魅力的だ。ソニーのほか、三菱商事や日立製作所、京セラなどが次々と株主となり、九州電力、東京ガス、ENEOSなどのエネルギー関連企業も出資している。
いま、年40億~50億円の電力がデジタルグリッドのプラットフォームで取引されている。安価でクリーンなエネルギーへの需要は間違いなく増えてゆく。だが天才エンジニアの高橋は、インタビューの途中でとんでもないことをサラリと言った。
「僕は『電気代ゼロ』を信じる派ですから」
太陽光も風力もエネルギーの原価はタダである。究極の効率でそれが取引されれば、電子メールがタダで届くように、電気もタダになるかもしれない。「気軽に再エネを」の先に、彼らはとてつもない未来を思い描いている。(敬称略)(文/ジャーナリスト・大西康之)
※AERA 2022年2月21日号より抜粋