「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
今回は「アイドル」についてお話ししたいと思います。
私たちローソンでは、たとえば4年前からは欅坂46さん、一昨年からはNiziU(ニジュー)さん、昨年からはなにわ男子さんなど、色々なアイドルの方たちとキャンペーンをさせていただいています。彼らはやはり、その時代、その時代の社会を反映した形で世に出てこられる方たちだな、とも思います。
私が小中高校生だった頃は、松田聖子さんや「たのきんトリオ」、少し後には少年隊の皆さんなどが全盛期でした。ファンの根底に流れる思いは「好きだ」よりも「応援したい、みんなで守りたい」だったように感じます。これはいまのアイドルのファンの方々も同じかもしれないですね。
ただ違うのは、私の頃のアイドルは容易には手の届かない、「違う星」に住んでいる印象でしたが(笑)、今のアイドルの方々は、とても身近な存在であること。AKB48さんあたりからでしょうか、「比較的マイナーな存在の時から応援してメジャーにしていこう」、そういう存在になってきたように思います。NiziUさんの人気のきっかけが、デビュー前の紆余曲折や喜怒哀楽をテレビで一つの「物語」として追いかけたことだったのも、「みんなで(アイドルを)作っていく」という時代背景の象徴ですよね。
そういったアイドルの方々が人気を博していく過程には、私たちの商売のヒントみたいなものも何か、あるような気がしています。
どういうポイントで、人々が熱狂するのか。その熱狂具合って、どんな感じなのか。そしてその熱を、アイドルの皆さんはどのように自分の力にして、自分を変え、継続をさせていくのか。つまりその時代、その時代の「熱の作り方」のようなもの。それを垣間見る意味でも、アイドルの皆さんは私たちに刺激を与えてくれる存在だと感じています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年2月28日号