
放射線療法も進化しています。「定位放射線治療(SBRT)」は、コンピューター制御で放射線をピンポイントで当てることができ、合併症が少なく、手術に肉薄するくらいの成績を上げるようになってきました。がんが局所にとどまっている場合は十分に選択肢となります。
■患者を元気に帰すことで街の医師からの信頼を得る
トップ病院であり続けるのは、正直大変です。当院はほとんどが紹介患者さんなので、開業医や地域の病院の医師から継続的に紹介してもらえるよう、患者さんをしっかり治療して、元気に帰ってもらうことを何より心がけてきました。こうして信頼感を得てきたことで、今があるのだと思います。
具体的には、手術時間の短縮と術後合併症の減少です。呼吸器外科の分野では、手術の質が合併症を左右しますし、肺がんは対処が1日遅れると重篤な状況になる可能性があります。
コロナ禍により、資源や人員には限りがあって、医療も効率が求められていることが明らかになりました。当科は以前から治療の効率化を図り、手術時間の短縮によって1日の手術件数を増やしてきました。当院はコロナの入院患者さんをこれまで600人近く受け入れており、当科も人員を割かれましたが、それでも20年の肺がん手術数は682例あり、19年の651例から増やしています。
質の高い手術と丁寧な術後管理が可能な、マンパワーとチームワークがあることも当科の強みで、治療にあたるあらゆる職種が皆プロフェッショナルであるため、高度な集学的治療ができます。当院では、研究部門はゲノム医療、遺伝子レベルの研究をしていますし、内科では薬の治験も主導しています。
現在、患者さんの半分が70歳以上で、この20年で2倍になりました。80代が13%、7~8人に1人が80代という状況です。ですから、高齢化の問題にも積極的に対応しています。当然、心血管系の持病がある人が多いですから、都内の大学病院や専門病院と連携して、安全に手術をしています。