
プーチン氏に大きな思惑違いが生じたのだ。そして、ウクライナ軍の抵抗は強く、ロシア軍は思うように進撃できずに、プーチン氏は苦しい立場に立たされたわけだ。
だが、これには対抗するNATO側にも大きな問題がある。
プーチン氏のロシアに真っ向から対抗できるのは米国のバイデン大統領で、NATO各国と連携して、さまざまな経済制裁を実施している。だが、はっきり言って経済制裁ではそれほどロシアにダメージは与えられない。
当然ながら、効力が示せるのは軍事力で対抗することだ。もちろんバイデン氏は、そのことはよくわかっている。
だが、米国が軍事力で対抗すれば、第3次世界大戦になる。そして、おそらく核戦争になる。
それには米国民が大反対するだろう。もしもバイデン氏がその気配を見せたら、彼は失脚せざるを得なくなる。
とすると、ウクライナ問題は今のところ、残念ながら決着のありようがないと言わざるを得ない。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年3月18日号