段田安則(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
段田安則(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
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 アーサー・ミラーの代表作であり、不朽の名作「セールスマンの死」の公演が4月4日から始まる。主人公・ウィリーを演じるのは俳優の段田安則さん。65歳を迎えた節目の年に挑戦する舞台は、「新たな飛躍を求め、演劇界の金字塔に挑む」という触れ込みだが、当の本人は、もっと身近なネットショッピングに、自身の進化を実感していた。

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前編/八嶋智人やムロツヨシに影響も 段田安則の素顔に見る“名優たるゆえん”】より続く

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「経験を積んだからといって、いい芝居ができるとは限らないのが俳優の面白さであり、つらさでもあります。どんなベテラン俳優でも、どんな新人でも、芝居のときは同じ板の上に立つわけで、立場としては対等なんです。もし、僕の仕事がかんざし職人だとしたら、大ベテランと初めてかんざしを作った人とでは、その出来の差は歴然でしょうが、俳優の場合は、今日初めて舞台に立った人のほうがいい芝居をすることもある。歌舞伎や能のような伝統芸能なら、後世に伝えるべき型があるでしょうが、僕らのやっているストレートプレイの場合は、正解がないんです。演出家と相談しながら作っていくしかない。だから、芝居のたびにゼロからのスタートだと思っています」

 常にフラットな目線を持ち続けている段田さんだが、さすがに若い頃はベテランの俳優に対して、「対等だ」とは思えなかった。それは背伸びをすることになるからだ。

「40歳ぐらいになって、自分がもう若手ではないことに気づいた瞬間はありましたね。でも、今も若い俳優には嫉妬することがありますよ。好きな戯曲に若くて魅力的な俳優がキャスティングされているのを観て、『僕にはもうこの役はできないのか』と思ったりもしますし(笑)。半面、爺さんじゃないとできない役もあって。今回のウィリーなんかはその最たるものかもしれません」

◆60代半ばでAmazonデビュー

 演出は、イギリス人演出家のショーン・ホームズさん。段田さんはこれまでも何度か、海外の演出家とタッグを組んだことがある。

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