◆コロナ禍の危機 若手育成を模索

 子どもには誰もがいいところだけを見せられれば、と思うところですが、役者の場合はそれは無理。子どもは父親の楽屋も稽古も実際にやっている舞台も全部見ることができます。なので、うまくいく時もいかない時も全部見せる。それで彼自身がどう感じてどういうふうに生きていくのかを決めていけばいいのかなと思います。自分が教わったものは全部教えます。

――コロナ禍が2年以上続き、歌舞伎のありようも大きく変化してきた。今後、歌舞伎界の中核を担っていく幸四郎は歌舞伎の未来をどう見ているのだろうか。

 歌舞伎座が12カ月幕を開けるようになってから30年ほどが経ったでしょうか。自分が生きている間は意地として、12カ月興行を継続したいと思っています。とはいえ、今は何よりも危機だと思ってやっています。皆様にどうやって劇場に足を運んでいただくか。上演できる演目や公演数が格段に少なくなってもう2年です。後輩たちが舞台に立つチャンスが少なくなりました。そんな中でどうやって彼らを育てていくかは深刻だと思います。

 その一方で、今は配信に限らず「なんとか歌舞伎」が乱立している時代でもあります。それは歌舞伎の一つのナビですよね。歌舞伎座の大歌舞伎興行もあれば○○歌舞伎がある。○○歌舞伎が逆にターゲットを絞ってしまうと言いますが、そういう興行は興行で色が違うことを明確にすれば公演の仕方が変化するかもしれない。もう少し興行が安定してくればそこが役者にとっての一つの登竜門になったり、見る人にとってこれからの俳優たちを先取りして見る歌舞伎になったりするのではないでしょうか。

(構成/ライター・坂口さゆり)

週刊朝日  2022年3月18日号

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